2023年5月7日 復活節第5主日
ヨハネによる福音書14章1～14節
福音書 ヨハネ 14: 1～14(新196)
1「心を騒がせるな。神を信じなさい。そして、わたしをも信じなさい。 2わたしの父の家には住む所がたくさんある。もしなければ、あなたがたのために場所を用意しに行くと言ったであろうか。 3行ってあなたがたのために場所を用意したら、戻って来て、あなたがたをわたしのもとに迎える。こうして、わたしのいる所に、あなたがたもいることになる。 4わたしがどこへ行くのか、その道をあなたがたは知っている。」 5トマスが言った。「主よ、どこへ行かれるのか、わたしたちには分かりません。どうして、その道を知ることができるでしょうか。」 6イエスは言われた。「わたしは道であり、真理であり、命である。わたしを通らなければ、だれも父のもとに行くことができない。 7あなたがたがわたしを知っているなら、わたしの父をも知ることになる。今から、あなたがたは父を知る。いや、既に父を見ている。」 8フィリポが「主よ、わたしたちに御父をお示しください。そうすれば満足できます」と言うと、 9イエスは言われた。「フィリポ、こんなに長い間一緒にいるのに、わたしが分かっていないのか。わたしを見た者は、父を見たのだ。なぜ、『わたしたちに御父をお示しください』と言うのか。 10わたしが父の内におり、父がわたしの内におられることを、信じないのか。わたしがあなたがたに言う言葉は、自分から話しているのではない。わたしの内におられる父が、その業を行っておられるのである。 11わたしが父の内におり、父がわたしの内におられると、わたしが言うのを信じなさい。もしそれを信じないなら、業そのものによって信じなさい。 12はっきり言っておく。わたしを信じる者は、わたしが行う業を行い、また、もっと大きな業を行うようになる。わたしが父のもとへ行くからである。 13わたしの名によって願うことは、何でもかなえてあげよう。こうして、父は子によって栄光をお受けになる。 14わたしの名によってわたしに何かを願うならば、わたしがかなえてあげよう。」
先週から日課は復活のエピソードを離れてヨハネ福音書のイエス様のお話に移っています。今日の聖書の箇所では、イエス様は「行ってあなたがたのために場所を用意したら、戻って来て、あなたがたをわたしのもとに迎える。」と言われます。直前の箇所でイエス様はご自分が父の所へ行かれることについて、つまり十字架の死を迎えることについて弟子たちに語っておられました。イエス様と離れ離れになる不安を感じている弟子たちにイエス様が語られたのが今日の言葉です。
イエス様が十字架で死なれ、天に昇られたのは、弟子たちを置いていくためではありません。そうではなくて、行って天の国に弟子たちの場所を用意するためである、場所を用意したら私はまた戻ってくるとイエス様は言われます。イエス様は弟子たちに「わたしの父の家には住む所がたくさんある。」と言われます。天の国は神様と天使しか入れないような狭い物件ではありません。そこは神様の御心と同じくらい広くて、弟子たちそしてすべての人はイエス様のとりなしによってそこに住まうことができるというのです。弟子たちにとってイエス様と別れて生きる地上の人生は永遠に続くものではなく、天にある永遠の住まいが彼らに約束されているのです。
そうしてイエス様は「行ってあなたがたのために場所を用意したら、戻って来て、あなたがたをわたしのもとに迎える。」と言われます。イエス様が地上を離れて天に昇られるのは弟子たちのために天の住まいを用意するためです。イエス様が弟子たちを置いて天に昇られるのは彼らを見捨てるためではなく、彼らに永遠の救いを与えるためです。「こうして、わたしのいる所に、あなたがたもいることになる。」とイエス様は言われます。イエス様の用意してくださる「場所」は、父なる神様、そしてイエス様と共にいることができるすばらしい場所です。
しかしそのことを聞いた弟子たちはあまり納得していない様子です。弟子の一人であるトマスが「主よ、どこへ行かれるのか、わたしたちには分かりません。どうして、その道を知ることができるでしょうか。」と尋ねます。イエス様はこれからどこへ行くのですか、我々はどうやってその道を知ることができるのですか、とトマスは問うているのです。確かに私たちはイエス様がおっしゃるその「場所」を見たことがありません。それは結局どこなんだろう、何か証拠があるのだろうか、とトマスが思うのも自然なことです。
それに対してイエス様は「わたしは道であり、真理であり、命である。わたしを通らなければ、だれも父のもとに行くことができない。」とお答えになります。トマスが期待していたのよりも抽象的な答えであったかと思いますが、しかしこれはトマスが知る必要のあることでした。イエス様こそが父なる神と人類をつなぐ道、真理の啓示者、永遠の命の与え主であるからです。そうであるとすれば、私たちにできることは、イエス様を信じ、イエス様にすべてをお任せすることだけです。
イエス様は父なる神へ至る道です。父なる神様がどんなお方であるかを知るために、私たちはイエス様を知ります。イエス様の生涯とイエス様の言葉に「神とはどういうお方であるか」ということが示されているからです。イエス様は真理です。イエス様は人の中でただひとり、罪と偽りがなく生きたお方、この世のすべてを知っておられる方です。そしてイエス様は永遠の命を司るお方です。イエス様は十字架で死んで復活され、今もこの世を治めておられます。私たちがいずれ父なる神様のもとで真理を悟り、永遠の命に生きるということは、イエス様を通してしか知りようがありません。私たちは自分たちの命がどこから来てどこへ行くのか、真理とは何か永遠とは何か、完全には知ることができないのです。
私たちは神様の被造物ですから、自分たちがどこから来てどこへ行くのか、この世の真理がどうなっているのか、神様のように知ることはできません。しかしそんな私たちに神様はイエス様を与えてくださっています。「わたしは道であり、真理であり、命である。」と言われるイエス様についていくことが私たちにできることのすべてです。そうして私たちはイエス様に導かれて地上の生活を送り、そしていずれ天の国にイエス様が用意してくださった私たちのための場所に迎えていただけるのです。イエス様の十字架はそのために起こったこと、私たちをこの世に置いていくためではなく、私たちを再び迎えてくださるために起こったことなのです。
十字架で死なれて復活されたイエス様は、父なる神様のもとで永遠の命に生きておられます。そしてその同じ場所に私たちはいずれ迎えていただくことができます。それがどんな場所であるのか私たちには知りようがありませんが、道であり、真理であり、命であるイエス様が私たちを導いてくださいます。みことばと信仰が与えられていることの恵みに感謝して、与えられた地上の生を終わりまで歩んでまいりたいと思います。