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天国の鍵

Updated: Oct 7, 2020

2020年8月23日 聖霊降臨後第12主日

マタイによる福音書16章13~20節


13イエスは、フィリポ・カイサリア地方に行ったとき、弟子たちに、「人々は、人の子のことを何者だと言っているか」とお尋ねになった。 14弟子たちは言った。「『洗礼者ヨハネだ』と言う人も、『エリヤだ』と言う人もいます。ほかに、『エレミヤだ』とか、『預言者の一人だ』と言う人もいます。」 15イエスが言われた。「それでは、あなたがたはわたしを何者だと言うのか。」 16シモン・ペトロが、「あなたはメシア、生ける神の子です」と答えた。 17すると、イエスはお答えになった。「シモン・バルヨナ、あなたは幸いだ。あなたにこのことを現したのは、人間ではなく、わたしの天の父なのだ。 18わたしも言っておく。あなたはペトロ。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。陰府の力もこれに対抗できない。 19わたしはあなたに天の国の鍵を授ける。あなたが地上でつなぐことは、天上でもつながれる。あなたが地上で解くことは、天上でも解かれる。」 20それから、イエスは、御自分がメシアであることをだれにも話さないように、と弟子たちに命じられた。

イエス様は弟子たちと旅を続けておられます。今日の福音書の日課では、フィリポ・カイサリア地方に差し掛かりました。フィリポ・カイサリアというのはガリラヤ湖から北に40キロメートル行ったあたり、パン異教の神殿と皇帝の神殿が置かれていることで知られる町でした。そこでイエス様は弟子たちにこう尋ねられます。「人々は、人の子のことを何者だと言っているか」。みなは私のことを誰だと思っているのか、とおっしゃるのです。その質問に対して弟子たちはさまざまな答えを挙げます。洗礼者ヨハネ、エリヤ、エレミヤ、預言者の一人…。イエス様と同時代の人々は、イエス様のことをこのように見ていました。洗礼者ヨハネはこの時すでに殺されていましたが、「死者の中から生き返った者」「奇跡を行う者」として知られていました。預言者エリヤは終末的な預言をした人で、彼の再来はメシアが来ることの前触れであると信じられていました(マラキ書3:23)。エレミヤも同様に、当時の人々にとって影響力のある預言者でありました(マタイ福音書の著者はイエス様の生涯を描くのにエレミヤの預言を度々引き合いに出しています。)いずれにせよ、イエス様はそのような預言者の一人と考えられていました。つまり、特別な人とはみなされていましたが、神であるとは思われていなかったのです。


そしてイエス様は弟子たちにこう問いかけます。「それでは、あなたがたはわたしを何者だと言うのか。」イエス様は弟子たち全体にむかって、ではあなたがたはどう思いますかと尋ねます。その問いに弟子たちを代表して答えたのがシモン・ペトロでした。「あなたはメシア・生ける神の子です」と答えます。「メシア」とは「油を注がれた者」、イスラエルの文脈では「世に遣わされると言い伝えられてきた救い主」を指します。イエス様こそがそのメシア、イスラエルの民が待ち望んできた救い主であり、そして生きて働かれる神の子ですとペトロは答えたのです。


イエス様はペトロのこの答えを喜ばれました。まさにイエス様はメシアであり、神の子であったからです。そしてイエス様は「わたしはこの岩の上に教会を建てる」とおっしゃいます。実は「教会」という言葉は福音書の中にほとんど見つけることができません。四つの福音書のうち、「教会」という言葉はここと、マタイ18:17にのみ見ることができます。イエス様はユダヤ教から分離して自分の教会を作ろうとしていたわけではありませんから当然と言えば当然ですが、しかし私たちにとって欠かせない「教会」というものがイエス様ご自身によってはほとんど語られていないということに改めてはっとさせられる部分があります。このようにイエス様は教会についてあまり語られなかったものの、16節のイエス様の宣言は、教会というものの本質をあらわしています。それは、教会は人であるということです。教会は信じる人の集まりであって、土地や建物ではないということです。イエス様が「ここに私の教会を建てる」と言われた時、イエス様はいい土地を見つけて「よしこの場所に教会を建てよう」と言われたのではなくて、弟子たちの信仰をご覧になって、そしてその弟子たちの上に、教会を建てると言われました。教会は、イエス様がメシア・神の子であることを信じて告白する人々の群れを指します。ですから私たちもまた、教会です。


そしてイエス様は弟子の代表であるペトロに「天の国の鍵」をくださいました。へえ~天の国に鍵なんてついてるのか、という感じですが、この地上と天の国とをつなぐ権威をイエス様はペトロと弟子たちに与えられたのです。それは彼らが地上にあって天の国をのぞみ、人々を天の国に招くためでした。具体的には「あなたが地上でつなぐことは、天上でもつながれる。あなたが地上で解くことは、天上でも解かれる。」と言われています。「つなぐ」「解く」というのはユダヤ教用語の一つで、ある人が律法の拘束を受ける状態が「つなぐ」、律法の拘束を免除された状態が「解く」と表現されます。律法を解釈して人々の生活全般を導くというのはユダヤ教のラビ(宗教的指導者)の役割でしたが、その役割をもイエス様は「教会」である彼らに与えられたのです。天の国と地上をつなぎ、地上にあって天の国を述べ伝えること。み言葉に向き合って律法を解釈し、神様のもとに人々を招くこと。それが教会に与えられたつとめでありました。


教会は信じる人の集まりです。私たちそれぞれもまた、教会を形作っている一人です。イエス様は「教会」である私たちに、大きな祝福と大切なつとめを与えてくださいました。地上にあって天の国のことを思うこと。そしてみ言葉と向き合い、神様のもとに人々を招くこと。それがイエス様からいただいた大切なつとめです。今日のイエス様の言葉を受け止めて、教会生活を送ってまいりたいと思います。

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