私たちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安とが、あなたがたにあるように。アーメン
世界ではじめのクリスマスは、今から2000年ほど前の出来事です。
天使のお告げによってお腹に赤ちゃんが与えられたマリアと、夫のヨセフは、皇帝から“住民登録をするために故郷に戻りなさい”との命令があったため、ベツレヘムという町に向かっていました。ただ、マリアのお腹には赤ちゃんがいるため、旅を急ぐことはできません。多くの人が先にベツレヘムに戻っていたため、マリアとヨセフがついた頃には宿屋は満員で、泊まる場所がありませんでした。
しかし、子どもは今にも生まれそうです。困った二人に、ある宿屋の主人が、“馬小屋ならば空いている”と言ってくれました。風をしのげれば少し暖かいため、馬小屋に泊めてもらうことにしたのです。
その夜、馬小屋で赤ちゃんが生まれました。マリアとヨセフは、寒さの中、動物たちに囲まれながら、チクチクと刺さる藁の上に赤ちゃんを寝かせなければならなりませんでした。この赤ちゃんこそ、イエスさまです。
赤ちゃんのお生まれをマリアとヨセフ以外にも、知らされた人たちがいました。羊飼いたちです。羊飼いは、いろいろな場所に羊を連れていき、草を食べさせなければなりません。草のある、人の土地に入ることもあるので、人々に嫌われることもありました。羊を飼うため町に住むことはできず、野宿していた羊飼いたち。火を焚き、寝ないで羊を守らなければ、獣に食べられてしまいます。生きるために一生懸命で働いても、人に嫌われ、町にも住めず、ゆっくりと眠ることもできない。休みの日もありません。そのように、苦しくてもがんばって生きていた羊飼いたちの前に、天使(てんし)が現れたのです。
天使は言いました。“怖がらないでいいよ。今日、あなたたちのために救い主がお生まれになりました。飼い葉桶に寝かされている赤ちゃんをあなたたちは見つけるだろう”。
羊飼いたちは大変驚きましたが、天使の話を信じ、すぐに出かけて行って、飼い葉桶で眠る救い主に会うことができました。たくさん苦しい思いをしてきたからこそ、だれよりも救い主を待ち望んでいたのです。そして、天使の話した通り、飼い葉桶に眠るイエスさまを見つけた羊飼いたちは、神さまをほめたたえ、帰っていきました。
マリアとヨセフ、羊飼いたち、そして、動物たち。最初のクリスマスは、こうして馬小屋の中で、静かに祝われたのです。
ユダヤの人すべてが、“神さまが救い主を私たちのところに送ってくださる”という約束が聖書に書かれていることを知っていました。その中で、真っ先にイエスさまのお生まれを知らされたのはだれだったか。だれにも見向きもされず、必死にがんばっても、その日を生きるのがせいいっぱいな羊飼いたちでした。本当に貧しい生活をしながらも、神さまの救いを待ち望んでいた人たちに、真っ先にイエスさまのお生まれは伝えられたのです。神さまは、その小さな一人にしっかりとまなざしを注がれる方なのです。
もし、イエスさまが王宮で生まれたならば、羊飼いたちは会いに行くことはできなかったでしょう。汚い服では、きっと入(い)れてもらえないからです。イエスさまが馬小屋でお生まれになったのは、大変な思いをしながら生きていた人たちでも会いに来られるように用意された神さまの愛のしるしだったのだと思います。
クリスマスは、イエスさまのお誕生日です。悩んだり、つらい思いを抱えながら生きていた人たちに、“救い主がきたぞ!”との喜びの知らせが伝えられた記念の日です。そして、羊飼いたちだけではなく、私たち一人ひとりにも喜びの知らせが語られています。神さまは、苦しい思いをしている人を放ってはおかれず、必要な愛を注いでくださいます。私たち一人ひとりは、神さまから大切にされているのです。
後に、イエスさまは言われます。「わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」(マタイ28:20)。大変なこと、苦しいことがあっても、イエスさまは私たちと共にいてくださると約束してくださいました。世界ではじめのクリスマスにお生(う)まれになったイエスさまという希望の星は、今も輝き続け、私たちを照らしています。その温かさの中を、私たちは歩んで行きたいのです。
望みの神が、信仰からくるあらゆる喜びと平安とをあなたがたに満たし、聖霊の力によって、あなたがたを望みにあふれさせてくださるように。アーメン